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神採りアルケミーマイスター 【かみどりあるけみーまいすたー】 ジャンル 知識採集+工房運営+戦術シミュレーションRPG 対応機種 Windows XP/Vista/7 発売・開発元 エウシュリー 発売日 2011年4月22日(金) 定価 9,400円(税別) レーティング アダルトゲーム 配信 2017年12月8日/6,600円 判定 良作 概要 ストーリー システム・特徴 評価点 問題点 総評 余談 概要 その界隈ではゲーム性重視の作品を制作しているブランド「エウシュリー」の一作品。 ノベル形式やアドベンチャーが大部分を占める界隈では「遊べるゲーム」というだけでも貴重だが、当ブランドは完成度の高いゲームシステムや豊富なやり込み要素でユーザーから好評を博している。 本作は、ダンジョンや戦闘システムに前々作『姫狩りダンジョンマイスター』のシステムを進化させたものを使用している。前々作のシステムや発売前に公開された体験版が好評だったことから高い期待を寄せられ、雑誌等でも大きく取り上げられた。代表曰く、「ペイラインは25000本」。アダルトゲームとしては高めの開発費でも話題を呼んだ。 ストーリー ラウルバージュ大陸南方セテトリ地方― その一角を担うミケルティ王国は、長きに渡る戦争の末に 連合都市として新たな歴史を刻み始めていた。 ミケルティ王国連合七大都市のひとつユイドラは、 諸国の技術が集まり多種多様な武具が生み出される工房都市。 そんな街に暮らすウィルフレドは亡き両親から小さな工房を受け継ぎ、 今、工匠として希望に満ちた一歩を踏み出した。 未だ王国内や隣国との緊張状態が続く中、それぞれに苦悩を抱えた 三人の女性を護衛として招き入れるウィルフレド。 彼は新たな技術の発見と創造を目指し、様々な種族の協力を得ながら、 更なる研鑽と工房の発展に勤しむ日々を送る。 やがて工房を発展させつつ仲間達との愛情を深めていく中、 それぞれが抱える問題に直面する。 国内での紛争、他国との戦争、他種族との諍いと、ユイドラを含む ミケルティ王国連合の存亡をかけた戦乱に巻き込まれていく……。 王国の平和は、若き工匠と少女たちの手に委ねられた。 システム・特徴 迷宮で手に入れた素材を使い新しい武具や道具を作って商売。工匠ランクの昇格条件達成を目指す。工匠ランクに合わせて店を増改築して家具を置いたり出来る。 前述の通り、ダンジョンや戦闘システムは前々作『姫狩り』のシステムに手を加えて使用されている。 精気自体が無くなり代わりに指揮力が出来た。これはユニットの出撃に必要なコスト値でこの数値を超えると移動にペナルティがかかる。 精気自体が無くなったことにより出撃門はユニットを出撃・帰還させるだけのものとなった。 個別ルートのあるヒロイン三人と主人公には衣装が存在し、それらを強化していくことで能力値を上昇させたり、スキルや技を増やせる。ルート確定したヒロインの衣装をある程度まで鍛えると別途のHシーンを見られるようになる。 主人公とヒロイン以外のキャラは衣装が無い代わりにアクセサリを二つ装備できる。 HPが0になってもキャラロストにならない。 前々作と違い、主人公が魔王や魔神では無く、ただの少年である為雰囲気は明るい。凌辱もない。 評価点 前々作のやり込み要素を生かしつつ、その不満点を解消しているところ。 キャラロストや縛り要素が無くなり、その分だけ遊びやすくなった。 エウシュリーのゲームは属性自体が分かりづらかった所があるが、今回は弱点属性だけ書いてあり、分かり辛い属性が無くなった。 1周目のストーリーではどのキャラも使えない場所はないバランス。 ただし、隠しダンジョンまで行くと壊れスキルがあり、それを取得できないキャラは愛がないと使えない状態となる。 前々作はどのエンディングも殆どマップやストーリーが変わりなかったが、本作は攻略キャラによってマップやストーリーがかなり違う。 前々作は1つしか装備できなかったが、本作は武器とアクセサリー1つ(ヒロインと主人公以外は2つ)装備できるようになり戦略の幅が広くなった。 また、ユニットの回避率が武器を装備すると反映されないなどの問題点も解消。さらに装備の性能も前々作ではスキル以外使い物にならなかった杖等が改善されている。 問題点 シナリオの出来がかなり悪い。 「エンディングまでに問題が根本的な解決を見ない」「展開が強引」「ルートによって脇役の印象が違いすぎる」等々、疑問符をつけざるを得ない点が多々ある。 前作『戦女神VERITA』のシナリオの完成度が極めて高かったこともあり、この点は尚更批判に上がる。 また、シナリオの構成上やむをえないのだが、性描写にたどり着くまでが非常に長い。 テキストの誤字や誤用も多く、攻略Wikiなどでまとめられているレベル。 前々作で引継ぎできたマップが本作では引継ぎ出来ない。 細かいバグが多い。パッチ適用で改善する。 総評 前々作の不満点を解消し、やりこみ要素はそのままでアイテム合成・販売や箱庭的な遊び方もプラスしたゲーム。体験版が楽しめれば、まず間違いなくハマる作品と言っても差し支えない。しかし、ゲーム性以外の部分では力不足の感も否めず、特にシナリオを重視する層に受けるかは難しいところではある。 余談 特典として特殊錬金ディスクが封入。『姫狩り』や『VERITA』とは違いダウンロード販売はない。 コミックマーケット、公式通販で本作のゲームを強化できるアペンドディスクを販売。 定額でエロゲー遊び放題の「GAMES 遊び放題 プラス」に登録されている。
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中島「昼飯どうする?」 どこからとも無くポップしてきた中島。 まあ、クラス一緒だからどこからとも無くって訳でもないんだが。 遊佐「フライングで入手しておいたから問題ない」 中島「相変わらず用意いいねぇ」 遊佐「お前もな」 正面の席にどかっと座りパンを齧る中島。 遊佐「ほう。コロッケパンか。良いチョイスだ」 中島「まぁなって、お前もコロッケパンだろ」 遊佐「いや、これはカニクリームコロッケパンだ」 中島「カニクリームコロッケだと!?」 がたっと勢い良く立ち上がる中島。 遊佐「ああ、試作品らしい。一番乗りしたらくれたぞ」 中島「か、かにくりーむころっけ……」 遊佐「なかなか美味い。次の主力商品になるかもしれんな」 中島「遊佐」 遊佐「どうした?」 中島「そのパン。俺によこせぇぇぇぇぇぇ」 中島がゆらりと立ち上がり俺ににじり寄ってくる。 見える。あいつの背中に、カニクリームコロッケに飢えたボギーが。 遊佐「お、俺は脅しには屈しないぞ」 迫力に気圧されながらも、パンとオレンジジュースを確保し、後退する。 中島「よこせぇぇぇぇ。よこせぇぇぇぇぇ」 遊佐「既に理性が崩壊している……」 ボギーじゃなくてグールだったか。 とりあえず逃げよう。 杏「きゃっ」 遊佐「どわっ」 教室の入り口に猛ダッシュで向かったのだが、丁度そこに居た杏にぶつかってしまった。 意外と可愛い悲鳴だったな。 っとそうじゃなくて。 遊佐「すまん。大丈夫か?」 杏「…………」 ちょっと恨めしそうな目で俺を睨む。 でも、パッと見、痛そうな様子も見えないけど……。 遊佐「あ」 良く見れば、彼女の腕の包帯にべっしゃりとオレンジジュースがかかっていた。 遊佐「ご、ごめんっ!」 杏「……ふん」 慌てて謝ったけど、聞く耳持たず、と言った様子で踵を返す杏。 遊佐「ちょ、ちょっと待った!」 思わず、はしっと彼女の腕を掴む。 杏「……何?」 ああ、すげーいらついてるよ。 声が物凄い不機嫌だし。 遊佐「ほら、包帯交換しないとまずいじゃん?」 杏「放っておいて」 手厳しいな。 けど、放っておいたら間違いなく水で洗うとかで済ませると思う。 保健室とか行きそうにないし。 遊佐「俺のせいだし。保健室いこう」 杏「あ、こら。離してっ」 抵抗する杏をぐいぐい引っ張って保健室へ向かう。 ……あれ? この光景ってちょっとまずい? 中島「遊佐が杏を保健室に連れ込……」 ああ、教室から嫌な言葉が聞こえた! すごく卑猥に聞こえますよ!? とりあえず後で中島泣かす! ………… …… ある種のさらし者状態だったけど、保健室到着。 何だか俺の名声が一気に下がった気がするぜ。 ましろ「保健室にいらっしゃいませ~」 遊佐「あ、ましろちゃん。保健委員だったんだ?」 中に居たのはましろちゃんだけだった。 好奇の視線に晒され続けたのもあってか、少しほっとする。 ましろ「まあ、一応?」 何で疑問形? 遊佐「ま、いいや。包帯の替えってあるかな?」 ましろ「まあ、それは保健室だからあるけど……?」 遊佐「杏の包帯にジュースかけちゃったから、交換してあげて欲しいんだけど」 ましろ「ああ、なるほど」 杏「替えを渡してくれれば一人でするから」 ましろ「ダメだよ。ちゃんと結ばないとすぐ解けたりするし」 杏「問題ない」 ましろ「はい。けが人は大人しくね。後、遊佐君は外に出ててね」 遊佐「え?」 ましろ「女の子のヒミツを覗くなんてしちゃダメだよ」 遊佐「それはステキな響きだね」 ましろ「分かったら回れ右してサクサク歩く」 遊佐「へーい」 ましろ「はい。それじゃ、杏ちゃん。脱ぎ脱ぎしましょうね」 杏「ちょっ。やめっ」 すげー振り向きたい! すげー振り向きたい! ましろ「遊佐君。足とまってるよ?」 遊佐「ゴメンナサイ」 保健室から追い出された形だが……。 どうしようかな……。 そういえば聖見てないな。 1.教室に食事に戻る。 2.杏が出てくるのを待つ。 ――――――1選択のケース(ましろフラグ全消失&好感度-5 まあ、とりあえず教室に戻るか。 中島に制裁をくわえないといけないし。 ――――――2選択のケース(ましろ好感度+2 とりあえず、昼飯の続きでも食べながら待つか。 もぐもぐ……。 もぐもぐ……。 遊佐「ん?」 静かだった保健室から話し声が聞こえる。 なんだろう? まあ、二人しか中に居ないけど。 あの二人が仲良くおしゃべりというのは、いまいち想像できない。 イメージ対極だし。 遊佐「むくむくと成長する好奇心に俺は負けたのだった」 独り言を呟いてから保健室の扉に耳を当てる。 杏「……には関係ない」 ましろ「たし……そう……」 杏「分かっ……放っ……」 ましろ「……た。でも……いい?」 ましろ「死に……も気に……」 杏「なっ!?」 ましろ「念のため……にしても……止めないよ?」 途切れ途切れに物騒な単語が聞こえる。 でも、良く聞こえないな。 もう少し密着してみよう。 ましろ「もし死にたいなら、今度は首を切れば良い」 ましろ「そうすれば、確実に死ねるよ」 遊佐「え?」 ましろちゃんがとんでもない事を言った。 呆然となる思考。 ましろ「自分でその勇気が無いなら、わたしが殺してあげる」 続いて耳に入って来た冷たい言葉。 これは、本当に、ましろちゃんが、言っているのか? 杏「な、何をばかなっ」 杏のいうとおりだ、なにを馬鹿なことを言ってるんだ? 冗談だよな? ましろちゃん。 ふらふらと、気づいたら扉からはなれ、壁に寄りかかっていた。 そう、言えば……。 遊佐「たまに、変なことあったよな……」 ましろちゃん。いつも笑顔で、ちょっと抜けてるところもある。 でも、俺は何か聞き漏らしていたのかもしれない。 彼女の笑顔の裏の何かを。 遊佐「俺は……」 今、初めて、本当の意味で彼女の事を知りたいと思った。 ………… …… しばらくして出てきた杏は、どこかぼーっとした様子だった。 遊佐「おつかれさん」 杏「あ」 遊佐「どうした?」 杏「いや、ちょっと一人にさせて」 フラフラとどこかに歩いていく杏。 多分、俺も似たような状態だろう。 遊佐「ふぅ……」 ため息一つ吐いて、俺も重い腰をあげた。 チャイムが鳴る前に、教室に戻ろう。 とりあえず、いつもどおりに振舞おう。
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神採りアルケミーマイスター 廉価版でるみたいね - 名無しさん (2024-02-22 01 18 21) 公式がXで諸事情によりアペンド追加はできなかったって言ってるからやっぱアペンドって再販や配布する上でなんか問題あるんだろうな - 名無しさん (2024-04-26 12 51 18)
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神採りアルケミーマイスターの登場人物 神採りアルケミーマイスターの登場人物 ミケルティ王国連合ユイドラの街工匠 工匠以外の人物 サンタリアの街 ミケルティ王国時代の人物 ディスナフロディ神権国 レイシアメイル(エルフ領域の森) シセティカ湖 絶壁の教会跡 エレカレン大地底湖 ロセアン山脈 ミサンシェル フェマ山脈 光燐の谷 グシメラの魔宮 リフィア一行 マーズテリア神殿 その他 マスコット ミケルティ王国連合 ユイドラの街 工匠 ウィルフレド・ディオン レグナー・アーシェス ロサナ・レビエラ 浅黒い工匠 鍛冶自慢の工匠 義手の工匠 工匠会幹部 太った工匠 ガレドア・クドリフト ルーデンステルグ・レビエラ 工匠以外の人物 エミリッタ ハンナ ジェーン グノム ティアン チャチャ 馴染みの店員 サンタリアの街 クレドリアムス・エシュナー ミケルティ王国時代の人物 トキーグ・ジルテリィ セテア・ジルテリィ ディスナフロディ神権国 ユエラ ディスナ ディ・ファンダオ レイシアメイル(エルフ領域の森) セラヴァルウィ・エンドース クレアンヌ クレール エルフの長 シセティカ湖 水那 絶壁の教会跡 メロディアーナ エレカレン大地底湖 パラスケヴァス ロセアン山脈 狐伯蓮 永恒 ミサンシェル エリザスレイン フェマ山脈 ガプタール 光燐の谷 フィニリィ グシメラの魔宮 ミレーヌ・プロア リフィア一行 リフィア・イリーナ・マーシルン エヴリーヌ パイモン マーズテリア神殿 ロカ・ルースコート その他 アスモデウス シャルティ ラグスムエナ ガンツ アティエッタ エドラン 灰狐仙 鼬黄狐 マスコット エウシュリーちゃん ブラックエウシュリーちゃん エウクレイアさん アナスタシア
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さて、次の授業は体育なわけだが。 着替えも済ませた俺は中庭の木陰でのんびりしていた。 優雅なひと時だ。 ごろごろしてるとサボりたくなるが、それよりも。 ぽつぽつといる女子の体育着姿が眩しい。 聖「何をしている?」 不意に、俺の視界にふとも……もとい、聖が割り込んできた。 遊佐「見ての通りゴロゴロしてる」 聖「私には女子の姿を眺めてニヤニヤしてるように見えたんだが」 遊佐「気のせいじゃないか?」 しれっととぼけて見せるが、聖はじとーっとした視線をやめない。 聖「はぁ。全く……」 あきれたようなため息をつかれたが、気にしないでおこう。 遊佐「で?」 聖「ん?」 遊佐「何か用でもあるのか?」 聖「いや、特には無いな」 遊佐「珍しいな」 聖「何がだ?」 遊佐「俺に用もなく声をかけることかな」 聖「まあ、そうかもな」 遊佐「座るか?」 聖「遠慮しておく」 ゆったりとした空気が辺りを包む。 聖が大人しいこともあるんだな。 遊佐「ああ、ましろちゃんがいないからか」 聖「ましろならまだ教室だが」 遊佐「ん? いや、聖が静かな理由」 聖「私が騒がしいみたいな口ぶりだな」 遊佐「はっはっは。流せよ」 さりげなくグーを用意するのはやめろよ? 聖「いつもはお前がちょっかいを出すからだ」 遊佐「俺は普通にしてるだけだぞ?」 聖「迷惑な奴だな」 遊佐「お前には言われたくないんだが……」 聖「ましろにいらぬちょっかいを出す輩が悪いだけだ」 遊佐「まあ、それでいいよ」 何でそんな事してるんだろうなぁ。 遊佐「なあ。聖」 聖「何だ?」 遊佐「聖って、何でましろちゃんを守ってんの?」 聖「祖父の遺言だ」 遊佐「マジか?」 聖「嘘だ」 がくっ。 遊佐「な、なかなかお茶目じゃないか。コノヤロウ」 体勢を戻しながら苦笑いを浮かべる俺に、聖はそっぽを向いた。 聖「そもそも答える必要もないだろう」 遊佐「まあ、そう言われるとどうにもだが」 しかし……。 遊佐「気になるじゃないか」 聖「なぜだ?」 ――――――選択分岐A 1.ましろのことが知りたいから 2.聖のことが知りたいから ――――――A1選択のケース(変化なし 遊佐「ましろちゃんのことでもあるしね」 聖「ふん。なおさら答えると思うか?」 遊佐「理由を聞いたら俺も引っ込むかもよ?」 聖「信じられるか」 ――――――A2選択のケース(聖好感度+1 遊佐「それはほら、聖のことが知りたいからだ」 聖「恥ずかしげもなく、良く言えるな」 遊佐「惚れんなよ?」 聖「誰が惚れるか」 ――――――選択分岐A終了 遊佐「つめてーなー」 聖「当たり前だ」 遊佐「で、何でなんだ?」 聖「しつこいな。お前」 遊佐「それほどでもない」 聖「やれやれ……」 んー。何か答えづらい事情でもあるんかねぇ? まあ、気になっただけだけど……。 聖「そうだな……」 遊佐「ん……」 聖「似てた気がしたんだ」 似てた? 遊佐「誰に?」 聖「さあ、誰だろうな」 曖昧にわらって誤魔化す聖。 聖「で、仲良くなって、気がついたらこうなっていた」 遊佐「説明になってないぞ」 聖「譲歩してやったんだ。我慢しろ」 遊佐「へいへい」 聖「ま、それだけだな。大した理由ではない」 遊佐「ふぅん」 聖「実際は全然似てなかったが、これ以上は贅沢だな」 遊佐「これ以上……ねぇ」 やれやれ、訳が分からんな。 聖「私はこれで行くぞ。授業遅れるなよ」 遊佐「あー。まてまて」 聖「なんだ?」 遊佐「もう一個いいか?」 聖「わがままなやつだな」 遊佐「あのさぁ」 ――――――選択分岐B 1.誰のために? 2.本当は誰を? ――――――B1選択時(聖好感度+1 遊佐「それって誰のためなんだ?」 聖「痛いところを突くな」 遊佐「嫌なら答えなくてもいいぞ」 聖「じゃあ、そうさせてもらおう」 ――――――B2選択時(聖好感度-1 遊佐「本当は誰を守りたかったんだ?」 聖「教えてやると思うか?」 遊佐「一応聞いてみただけさ」 聖「ふん」 ――――――選択分岐B終了 聖「もう無いか?」 遊佐「ああ、最後に一つ」 聖「最後だな」 遊佐「スリーサイズと風呂でどこから洗うかを教えてくれ」 聖「死ね」 遊佐「ぐふぉっ」 座ってる俺のアゴを綺麗に蹴り上げて去っていく聖。 遊佐「やれやれ」 何か湿っぽい空気を打ち消そうとしただけなんだけどなぁ。 遊佐「あいつにも色々あるんだな」 さて、俺もそろそろグランドに向かうか。
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数時間の戦いが終わり、俺はひと時の休息を手に入れた。 まあ、要するに昼休みのことなんだが。 昼飯も先んじて入手しておいた。 平和な昼休みというものだな。 しかし、一人で食べるのは寂しい。 遊佐「ウサギは寂しいと死んじゃうのよ!」 ましろ「ふぇ!?」 隣の席で、のんびりとお昼を用意していたましろちゃんが奇声をあげる。 むしろ、原因は俺の奇声だろうけど。 ましろ「えっと、一緒にお昼にする?」 おずおずと尋ねてくるましろちゃん。 天使と書いてフェア……もといエンジェルだな。 遊佐「はい。お願いします。むしろ是非」 ましろ「あ、あはは」 苦笑いを浮かべてる気がするけど気にしない。 うん。気にしないんだから。 聖「遊佐。どけ。いや、むしろ消えろ」 遊佐「い、いきなり沸くなよ」 後、もう少し優しい言葉をかけてくれ。 聖「ましろにちょっかいを出したらシメるって言っただろうが」 あれ? なんか視界が真っ暗なんですけど……。 遊佐「なんか痛い! 頭がミシミシと痛い!」 聖「それと、ウサギは寂しくても死なないからな?」 遊佐「そうなのか!?」 聖「お前には言ってない」 遊佐「なんかさらに痛くなったんすけど!?」 ましろ「聖ちゃん! 遊佐君の頭がオレンジジュースの素材みたいになってるよ!?」 そ、それってつまり……。 遊佐「アイアンクローかよ!」 聖「ましろ。遊佐でジュースを作っても、毒薬くらいにしかならないと思うぞ?」 遊佐「スルーかよ!」 あ、やばい。そろそろ意識が……。 たすけ……。 ましろ「聖ちゃん。そろそろ離してあげないと死んじゃうよ……」 聖「ましろのためなら前科持ちになろうと平気だぞ」 ましろ「えっと、その……。あ、そろそろ勘弁してあげようよ」 聖「しかし……」 ましろ「ね? お願い」 聖「……分かった」 どさっと放り投げられる俺。 遊佐「……ありがとう。ましろちゃん」 若干朦朧としているけど、ギリギリ意識がもったのはラッキーだな。 ましろ「大丈夫?」 遊佐「多分……」 心配そうだけど、こっちに近寄ろうとしないのは何故? ましろ「ごめんね。聖ちゃんはたまに……パワフルだから」 パワフルは何か違う気がする。 よし。やっと視界が戻ってきた……。 ああ、なるほど。 近くに来ないのは、聖がこちらを威嚇してるからか。 遊佐「聖。いいじゃないか。昼飯くらい」 とりあえず警戒態勢を取りながら、お父さんみたいな事を言ってみる。 聖「ふしゃーっ!」 蛇みたいな威嚇音を出して俺を牽制する。 取り付く島も無いじゃないか。 ましろ「まあまあ。遊佐君も転校したてで友人も少ないだろうし。ね?」 ましろちゃんナイスフォロー! 何となく胸が痛いのはきっと気のせい。 聖「しかし……」 ましろ「お願い」 子犬の瞳でましろちゃんが聖を見つめる。 聖「……分かった」 さっき解放されたのもコレのおかげだろうか? 聖「妙な真似をしたら窓から放り投げるからな」 眼力だけで人を殺せそうな視線を俺に投げるのはやめてくれないか? なんて言ったら窓から捨てられるんだろうな。 遊佐「分かったよ」 ここは大人しくしておくのが吉だ。 ましろ「じゃあ、食べようか」 遊佐「うん。ありがとう」 聖「ふんっ」 俺とましろちゃんの間に不機嫌そうに聖が座る。 遊佐「なあ、聖。ちょっと聞いてもいいかな?」 聖「なんだ?」 遊佐「えーっと。何故そこに?」 聖「私はいつもましろと食事を取っているからだが?」 遊佐「ああ。なるほど」 と、言う事は……。 遊佐「3人で食事になるわけかな?」 聖「不本意ながらそうなるな」 遊佐「そうなんだ……」 ……さようなら。平和な昼休み。 ましろ「昨日やってたお笑いのテレビ番組……」 聖「初登場の彼はつまらなかったな。出演できたのが不思議だ」 ん? ましろ「えっと、部活動とかは……」 聖「最近は少し厳しいな。まあ、時期的に仕方ないのだろうが」 あれ? ましろ「遊佐君は好き嫌いとか……」 遊佐「まあ、いちお……」 聖「私は主に魚介類というかカニが好きだぞ」 いやいやいや。 遊佐「ちょっとまて!」 聖「何だ? 騒々しいな」 遊佐「俺への会話をシャットアウトするなよ!」 聖「被害妄想じゃないか? 暗い男だな」 遊佐「明らかに事実じゃないか。最後のとか名指しだったぞ?」 聖「私は聞こえなかったが?」 ましろ「あ、あはは……」 ましろちゃんが乾いた笑いをしている。 ひょっとして……。 遊佐「ましろちゃん。まさかいつものこと?」 ましろ「うん。まあ……。そうなるねぇ」 むしろ諦めの表情を浮かべるましろちゃん。 遊佐「…………」 聖「どうした?」 遊佐「ひどい。あまりにもひどい」 オーバーアクション気味に頭をかかえる。 聖「ふっ。尻尾を巻いて逃げ帰るがいい」 対する聖は勝ち誇った表情だ。 が、知ったことではない。 遊佐「ましろちゃんがかわいそうだろうが!」 聖「何!?」 驚愕する聖。 遊佐「何だよその過保護……いや! いじめは!」 聖「いじめだと!?」 遊佐「聖。お前はましろちゃんに人並みの学園生活すら送らせないつもりか!」 聖「何を言う! 私はましろのためだけに生活しているんだぞ!?」 ましろ「いや、それはちょっと……」 遊佐「ばかやろう!」 聖「なっ!?」 遊佐「聞け! ましろちゃんが将来、学生時代の懐かしい恋物語を友人と話したとしよう!」 聖「そ、そんな話は……」 遊佐「その時! ましろちゃんは変な女友達のせいで一つもそういう話が無かった事になる!」 聖「変だと!?」 遊佐「そして! ましろちゃんは友人に百合の人の烙印を押され! 友人は消えていき!」 ずびしっと聖を指差す。 遊佐「引きこもりがちになり! いずれ社会に対応できなくなってしまうぞ!」 ましろ「いや、それもさすがに……」 聖「そ、そんな馬鹿なっ」 遊佐「その上原因だったお前は、携帯からも消され、二度と連絡を取らなくなるんだ」 聖「うぐぅっ」 衝撃を受けたように後ずさる聖。 聖「い、いや。遊佐! それは仮定の話だろう!」 何とか踏みとどまって聖が反撃する。 遊佐「でもさぁ。あんまりガチガチに過保護にしても良くないと思うんだよ」 聖「って、急にテンションを戻すんじゃない!」 遊佐「だから、恋愛とか騙されそうになるまでは自由にしてあげるべきじゃね?」 聖「む、むぅ……」 遊佐「まあ、聖がしたいようにすればいいかもだけどさ? ましろちゃんの人生な訳だし?」 聖「そう……だな……」 心なしかショボンとした様子で弁当箱を箸でつつく聖。 遊佐「いや、誰かを守ろうとするのは中々できる事じゃないさ」 聖「そ、そうか?」 遊佐「まあ、少し加減して、ほどほどに頑張ったほうが良いと思うぞ」 聖「そうだな。うん」 ふっ。 勝った! ましろ「遊佐君。すごいねぇ……」 遊佐「俺の秘密の特技の一つ。流嚥下だ」 ましろ「良く分からないけどかっこいいね」 遊佐「ふっ。だろう?」 ちなみに何をしたかというと……。 まず、場の空気。つまり流れを一気に飲み込んで、急転させ、相手のペースを乱す。 そして、相手を何となく納得させる技だ。 ノリが良い相手でないと通じないのが難点だが。 実はついさっき名づけたのは秘密な。 遊佐「うん。聖が実はノリの良い性格でよかった」 聖「遊佐よ! 私はこれからもましろを守るぞ!」 ましろ「あ、うん。ありがと」 何となく一件落着だな。 遊佐「ところで聖」 聖「何だ?」 遊佐「いつ俺の名前を覚えたんだ?」 ましろ「というと?」 遊佐「いや、一番最初の頃は代名詞とか転校生とか呼ばれてた気がするし?」 ましろ「聖ちゃんは照れ屋だからね」 ……似合わねーな。 遊佐「じゃあ、親しくなると遊佐君とか遊佐っちとか呼んでくれるのか?」 聖「は? 何馬鹿なことを言ってるんだ?」 ……ですよねー。 遊佐「まあ、それはともかく」 聖「ん?」 1.これからよろしくな 2.一緒にましろちゃんを見守っていこうぜ 1選択時(聖好感度+1 2選択時(変化無し ――――――選択分岐なし 聖「絶対いやだ」 遊佐「何で!?」 聖「お前は危険だと私の勘が告げている」 遊佐「おいおい……」 やっぱり頑固なんだな。 ましろ「ところで二人とも」 遊佐&聖「ん?」 ましろ「後5分くらいでお昼終わるけど、ご飯食べなくていいの?」 遊佐&聖「なっ!」 本当だ。時間残ってねえ! い、いそがねばっ。 ましろ「息ぴったりだねぇ」 急いで食事すると、みんな似たような感じになると思うけど……。 って、ましろちゃんだけ食べ終わってる!? 俺らが掛け合いをしてる間に静かに食べてたのか!! ましろ「良く噛まないとだよ」 にこにこと母親みたいな事をいうましろちゃん。 だが、俺たちは言葉を発する時間も惜しく昼飯をかきこむ。 何か嬉しそうに微笑んでいる、ましろちゃんの一人勝ちに思えた。
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遊佐「んー。やっぱ結構広いな」 何となくぶらぶらと校内をうろつく俺。 トイレのついでに散策を試みたんだが……。 遊佐「軽く迷ったかな?」 学校って基本的に同じマップ、もとい、廊下だからなぁ。 クラス表記とか見れば大体分かるんじゃね? ってのは、甘かったか。 うっかり特別教室とかが並ぶところに入り込んでしまった。 授業遅れるかもしれないなぁ。 遊佐「こういうとき、ましろちゃんとかに会えれば助かるんだけどな」 ほとんど人の姿はないし。 知り合いがいる可能性は皆無だろうなぁ。 まあ、嘆いても仕方ないか。 ??「おい、貴様。何をしている」 聞き覚えはあるけど、振り向きたくない声が聞こえた。 うん。振り向かないでおこう。 俺は直感を大事にするほうなんだ。 ??「待て」 いきなり高圧的に声をかけてくるヤツに、ろくなヤツはいないしな。 ??「待てといっているだろう」 さて、教室はどっちかなぁ。 ??「人の話を聞け」 遊佐「むぉ!?」 急に膝の後ろに何かが当たり、俺はかくんと倒れそうになった。 こ、これはなつかしの……。 遊佐「膝カックン!?」 聖「やっと気づいたか」 あきれたような表情を浮かべながら、聖がため息をはく。 後ろから声をかけてたのは聖だったか。 くそう。驚きのあまり振り向いてしまった。 やっぱり振り向きたくなかったな。 なんか苦手だし。 聖「で、お前はこんなところで何をしている?」 遊佐「ぶらぶらしてる」 聖「ぶらぶらって……なぜこんなところまで……」 遊佐「何かまずいのか?」 聖「あー。いや。そこそこ遠いしな?」 遊佐「ああ、やっぱ遠いんだ?」 道理で教室に戻れないわけだな。 遊佐「ところで聖は何をしてたんだ?」 聖「野暮用だ。気にするな」 遊佐「ふむ……」 聖「なんだ?」 遊佐「トイレか」 シンプルな俺の答えに、聖はため息一つで曖昧な表情を浮かべる。 聖「まあ、そういうことにしておけ」 ちっ、なんか気になるな。 とはいえ女子の秘密を無理やり聞き出す。なんて無粋な事はしないぜ? 俺は紳士だからな。 別に聖が怖いわけじゃないぞ? 聖「私はそろそろ戻るが、お前はどうする?」 遊佐「ん? ああ、俺もそうする」 聖「そうか。じゃ、またな」 軽く手を振って足早に去っていく聖。 俺はそれを見送って……。 遊佐「ちょっと待て!」 聖「何だ?」 遊佐「いや、普通そこは二人で一緒に教室に向かいながら、何かストロベリーな会話したりとかそういう話じゃないのか?」 聖「うむ。全力で遠慮させてもらおう」 遊佐「つっこみすら無しで拒否かよ!」 聖「ちなみに私はましろ以外ノーサンキューだ」 いや、それもどうだよ? 性別的に。 聖「大体、お前も私とそんな話があっても嬉しくないだろ」 遊佐「自信たっぷりだな」 聖「校内で転校して欲しい人物ランキングで1位だからな」 遊佐「どんなランキングだよ」 聖「ちなみに敵に回したくないランキングでは3位だ」 遊佐「なんで誇らしげなんだ?」 聖「ふっ。このランキングで上位と言う事は、だ」 遊佐「ふむふむ」 聖「私がきっちりとましろをガード出来ているということだ」 遊佐「……なんで?」 聖「転校して欲しい=ましろにちょっかい出したい。敵に回したくない=ちょっかい出したら怖い。と言うことだろう」 ポジティブに思えたけど、何か違う気がする。 聖「という訳で先に戻るぞ」 遊佐「いやいや待て」 聖「何だ? しつこいやつだな」 遊佐「一緒に行こうぜ」 聖「何でだ?」 1.聖と話がしたいから 2.迷ったから ――――――1選択のケース(好感度変化なし 遊佐「聖と話がしたいからだ」 聖「ほう。変わり者だな」 遊佐「という訳でいいかな?」 聖「分かったよ」 良かった。これで授業に間に合いそうだな。 聖「で?」 遊佐「へ?」 聖「私と何を話したいんだ?」 しまったぁぁぁぁぁ! 遊佐「え、えーっと……」 聖「どうした?」 遊佐「改まって聞かれると……思いつかない……」 うん。無難に答えておこう。 事実だし。 聖「ああ、そうだ」 遊佐「な、なんだ?」 ――――――2選択のケース(聖 好感度+1 遊佐「簡単に言えば」 聖「ふむ」 遊佐「迷ったからだ」 えっへん。 聖「威張って言うことか?」 遊佐「だから助けてくれよぅ」 聖「ぐぅっ。小鹿のような瞳で私を見るなっ」 聖は、ひるんでいる。 聖「分かった。分かったから……」 遊佐「ありがとう! 愛してる!」 聖「はいはい……」 なんだよ。愛の告白はスルーかよ。 遊佐「いや。本当に助かるよ」 聖「後でジュースくらいおごってもらうさ」 遊佐「ただじゃないのか」 聖「当たり前だ」 遊佐「まあ、いいか。聖は美人だし」 聖「眼科いってこい」 遊佐「へ?」 流されると思ってたんだが。 聖「誰にでもそんなことを言ってると、株が下がるぞ」 遊佐「いや、割と本心だけど……」 黙ってたら、だけどな。 聖「はいはい」 今流すのかよ。 聖「そんなことよりだな」 遊佐「ん?」 ――――――選択分岐ここまで 聖「先に言っておくが、ましろに近づいたら殺すからな?」 遊佐「笑顔で怖いこと言うなよ」 聖「私にボコられるのなら、まだ幸せだと思えよ?」 遊佐「ど、どういう意味だ?」 聖「ましろファンにリンチされるよりはマシだろう?」 遊佐「そ、そんなに人気あるのか? ましろちゃん」 聖「当たり前だ。ましろは地上に降りた最後の天使だぞ」 そんな大げさな。 聖「信じていないな? いいか? ましろはな……」 語りだした!? ………… …… 聖「つまり、ましろは……はっ」 教室目前になるまで、聖のましろちゃん談義は続いていた。 聖「あー……。こほんっ」 正気に戻ったか。 聖「ま、まあ。そういうわけだ」 しかし、気になっていたんだが……。 遊佐「なあ、俺にましろちゃんの魅力を説いて、俺が興味を抱いたらどうするんだ?」 聖「うっ」 遊佐「もしも、その勢いで仲良くなったりしたら……」 聖「病院送りくらいにはするぞ」 遊佐「ひでぇな」 聖「ま、まあ。とにかく気をつけるんだな」 良く分からない締めで、聖は教室に戻っていった。 しっかし……。 遊佐「あいつも大概変わり者だなぁ」 っと、俺も教室に戻るか。
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だるい。 授業というものはなんでこう……だるいんだろう? これは人類の永遠の命題だな。 ガラッ。 教室に響き渡る扉の音に、俺のどうでも良い思考は遮られた。 ん? 誰かトイレ行ってたっけ? もうすぐ授業終わるんだし、のんびりしてればいいのに。 教師「ああ、月島妹か。座りなさい」 ちらっと視線を送ると、黒髪の女生徒が無言で歩いていた。 確か杏だっけか? 特に返事もしないで席に座ったけど、いつもの事なのかな。 遊佐「ん?」 つきしま……いもうと? 他に誰か月島って居たよな。 遊佐「うーん?」 ましろ「遊佐君。どうかした?」 遊佐「あ。ましろちゃん」 考えてる間に授業終わったのか。 どうでもいいけどな。 遊佐「月島って、誰だっけ?」 ましろ「へ?」 ぽかんとするましろちゃん。 まあ、自分でもはしょりすぎて分からない質問だとは思うな。 聖「呼んだか?」 遊佐「へ?」 突如現れた聖。 まあ、ましろちゃんの傍には大概いるから、少し慣れたな。 って、待てよ? 遊佐「うーん」 聖「ん?」 えーっと、確か聖の苗字は月島だったな。 と言う事は……。 遊佐「お姉ちゃん?」 聖「いつ私がお前の姉になった?」 遊佐「いや、俺じゃなくてだな」 ましろ「ああ、杏ちゃんのこと?」 遊佐「そうそう。姉妹なのか?」 聖「ああ、そうだが」 遊佐「ふぅん」 そうなんだ。 遊佐「あんまり似てないな」 聖「ん。まあ……」 聖が言葉を濁しながら、杏をちらりと見る。 遊佐「仲いいのか?」 聖「まあ、普通……かな?……」 あんまり突っ込まない方がいいかな? 遊佐「しかし……」 聖「なんだ?」 遊佐「姉属性もちだったんだな」 聖「何だそれは?」 遊佐「特に意味は無い。気にするな」 ふぅん。へぇー……。 ましろ「遊佐君は何か思い入れでもあるの?」 遊佐「ん?」 ましろ「兄弟とかそういうの」 遊佐「いや、無いけど」 さっぱり無い。 ましろ「でも、何と言うか……食いつきが良かったよ?」 遊佐「まあ、憧れ的なものはあるよ」 ましろ「ふむふむ。どんなの?」 遊佐「美人の姉が朝優しく起こしてくれるとか」 ましろ「ふむふむ」 遊佐「弁当作ってくれるとか」 ましろ「ふむむ」 何となく聖を見る。 まあ、容姿は十分か。 優しさは足りなさそうだけど。 遊佐「まあ、そんな感じ?」 聖「私に聞くなよ」 遊佐「聖は優しさが足りないからダメだな」 聖「頼まれてもお断りだ」 むっ。 そう言われると逆らいたくなるのが人情だ。 遊佐「顔は良いからやっぱり合格」 聖「寒いことを言うな」 遊佐「というわけで毎朝俺を起こしてくれ」 聖「絶対いやだ」 遊佐「何でだよ!」 聖「ダメ人間がうつる」 遊佐「俺のどこがダメ人間だというんだ」 聖「礼儀がなってない。授業態度は悪い。頭も悪い。ついでに顔もわるい。つまり全部だな」 遊佐「お前に俺の魅力を理解することは無理か……」 聖「いや。そんなもの無いだろ」 遊佐「おま……」 好き放題言ってくれるぜ。 ああ、何か視界が滲んできちゃった。 ましろ「ねえねえ」 遊佐「ん?」 真剣な表情でましろちゃんが割って入った。 ましろ「ちょっと思ったんだけどね?」 聖「どうした? ましろ」 ましろ「さっきの、毎朝俺を起こしてくれっていう台詞」 遊佐「ああ。うん。どうかした?」 不意に、ましろちゃんは照れたようにクネクネしながら、とんでもない事を言った。 ましろ「なんだか、プロポーズみたいだったね」 ん? ああ、そう聞こえなくも……。 ………… …… 遊佐&聖「ええええええ!?」 聖が嫌そうな顔をしながら距離をとる。 多分俺も似たような感じだ。 聖「きも! 死ね! 死んでしまえ!」 遊佐「俺だって嫌だ! 誰が聖なんかと!」 聖「こっちから願い下げだ! その口縫い付けてこい!」 遊佐「ふざけるな! 俺のさわやかボイスが無くなったら世界の損失だぞ!」 聖「どこが世界の損失か! むしろ公害だ!」 遊佐「歩く暴力なお前よりはマシだ!」 ましろ「まあまあ、夫婦喧嘩はそのくらいにしようよ」 遊佐&聖「夫婦じゃない!」 睨みつける俺と聖に対し、ましろちゃんが嬉しそうに微笑んだ。 ましろ「ほら、息ぴったり」 のおおおおおぉぉ! がっくりとうなだれる俺と聖。 ましろ「とうとう聖ちゃんにも春が来たんだねぇ」 遠い目をしながら一人納得するましろちゃん。 遊佐「って、決定事項にしないでもらえるかな?」 ましろ「どうしようかなぁ」 聖「ま、ましろ。勘弁してくれ……」 ましろ「くすくす。冗談だよ?」 遊佐「そ、そうだよね……」 聖「良かった……」 ましろ「でも、思うんだけどね」 脱力する俺たちに、ましろちゃんが残酷な言葉を投げかける。 ましろ「いつもいつも喧嘩してたら『また夫婦喧嘩か』ってなると思うんだ」 遊佐「ぐふぅっ」 聖「うぐぅっ」 そ、それは避けなければ……。 ましろ「わたしにもじゃれあってるようにしか見えないし」 遊佐「そんな……」 ましろ「まあ、仲がいいのは良いことだと思うけどね」 遊佐「それは明らかに誤解だ!」 何とか弁明しなくては、俺と聖が仲良しさんになってしまう! 聖「ふ、ふふふ……」 遊佐「な、なんだ?」 気でもふれたか? 聖「ましろ。私は決めたぞ」 ましろ「どうしたの?」 聖「私はこれから、遊佐を無視することにする!」 遊佐「子供の喧嘩かよ!」 聖「これにより、私と遊佐は傍目にも完璧な他人。むしろ敵だ」 1.同意する 2.否定する ――――――1選択時 聖好感度-1 遊佐「確かにそうかも?」 聖「だから、お前もましろに近づくなよ?」 遊佐「それは無理」 聖「なん……だと……!」 遊佐「俺から心のオアシスを奪うような事を認めるわけがないだろうが」 聖「何がオアシスだ! お前は泥水でも啜ってるのがお似合いだ!」 遊佐「何だとゴルァ!」 ――――――2選択時 聖好感度+1 遊佐「嫌だ」 聖「何故だ!」 遊佐「平和的に喧嘩しなけりゃいいんじゃないのか?」 聖「きもっ!」 遊佐「まともなこと言ったのに『きもっ』って何だよ!」 聖「うるさい! 私は無視するって決めたんだ!」 遊佐「どうせすぐ噛み付くくせに何言ってやがる!」 聖「誰が噛み付き亀だゴルァ!」 ――――――選択分岐終了 再び威嚇を始める俺と聖をみて、ましろちゃんは軽くため息をはいた。 ましろ「やっぱり仲良しなんじゃないかな?」 遊佐&聖「絶対違う!」 聖「同時に言うな! 気持ち悪い!」 遊佐「お前がタイミングずらせば済むだろうが!」 俺と聖の戦いは授業が始まるまで続いた。
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遊佐「穴場とやらにはまだ着かないのか?」 中島「もうすぐだって」 放課後、中島に穴場のゲーセンがある。と拉致られた。 正直、あんまりやる気は無かった。 しかし、ゲーセンの穴場ってどういう物を指すんだ? 中島「さっきの続きだが、俺は剥き甘栗だけは許せないんだよな」 遊佐「便利でいいじゃないか」 中島「ばっか、お前甘栗は自分で剥くのが良いんじゃないか」 遊佐「知らん」 心の底からどうでも良い話だと思うんだが、中島の熱弁が続く。 中島「良いか? アレはある種のエロスを含んだカタルシスがあるんだぞ」 甘栗でエロスを感じ取れるお前がすごい。 聞き流してる俺の目に、見覚えのある後姿が目に入った。 遊佐「ん?」 中島「どうした?」 遊佐「ああ、あれって、聖とましろちゃんじゃないかな」 中島「ん? ああ、そうみたいだな」 何か大学生風の二人組みに話しかけられてるみたいだけど……。 遊佐「何だろうな?」 中島「ナンパか何かじゃないか?」 遊佐「ましろちゃんはともかく、聖にトライするのは勇気があるな」 中島「ま、黙ってりゃ美人の部類だしな」 まあ、それもそうか。 遊佐「一応助けるか」 中島「その必要は無いんじゃね?」 中島が言い終わる前に、大学生の一人が……浮いた。 そして、何か嫌な音を立てて落ちる。 度肝を抜かれたのか、もう一人が倒れた方を引っ張って逃げていった。 中島「ナイスアッパー」 聖「む?」 ましろ「あ、遊佐君たち」 遊佐「あれって生きてるよな?」 聖「多分平気だろう」 嫌な音が鳴った気がするけど。 中島「ところで何してんの?」 ましろ「お買い物の途中だよ」 遊佐「で、さっきの連中は?」 ましろ「道を聞かれたんだけど……」 古典的なナンパじゃないのか? 聖「鬱陶しかったから殴った。特に反省していない」 遊佐「ふぅん」 つっこむのも面倒くさいな。 聖「不埒者を排除したのに、今度は遊佐と中川か」 中島「なあ、中川って誰だ?」 遊佐「お前のことなんじゃないか?」 中島「はっはっは。俺は中島だぞ? そんなわけ無いだろう」 聖「む。中島だったか」 中島「ひどいっ」 あ、いじけた。 ほっとこう。 遊佐「しかし、ほんとにいつも一緒なんだな」 ましろ「私はいいって言ってるんだけどね」 聖「何を言うましろ。本当なら24時間体制にしたいところなんだぞ」 遊佐「それはむしろ監視というんじゃないか?」 聖「どこがだ?」 自覚ないのね。 遊佐「ところで、買い物って?」 ましろ「うーん。色々だよ」 遊佐「ふぅん。服とか?」 ましろ「うーん。そこまでの余裕はないかも」 遊佐「ふむむ」 ましろ「まあ、細かくは決めてないんだけど。ね? 聖ちゃん」 聖「ああ、どこであろうと私が守ってみせるぞ。ましろ」 遊佐「何か会話が通じて無くないか?」 聖「気のせいだ」 遊佐「ていうか、聖は買い物はしないのか?」 聖「いや、人並みにはするぞ」 遊佐「じゃあ、ましろちゃんとお互いの服を選ぶとか」 聖「唐突に何を言い出しているんだ。お前は?」 遊佐「聖ちゃんカワイー。とか、そういうかわいらしい光景があったりするのか?」 ましろ「いや、あんまりないかなぁ」 遊佐「無いのかぁ」 聖「というか変な妄想をするな」 中島「否!」 遊佐「うわっ」 中島が急に復活した。 心臓に悪いぞ。 中島「断じて否である!」 遊佐「急にどうした?」 中島「そういう可愛い光景はやるべきだ! むしろやらなくてはならない!」 遊佐「おーい?」 中島「いつもはつっけんどんな子が可愛い服装を持ってて恥ずかしがるとか!」 それってひょっとして聖のことか? 中島「そしてしぶしぶ着て見せてくれるとか!」 力強くこぶしを握り締めながら、中島が吠えた。 中島「そういう萌えシーンは大事だ!」 遊佐「何のサービスなんだ?」 中島「分からないのか! ばかびゃぶら!」 俺を指差し罵倒しようとした中島が、横向きに飛んでいった。 高速で回転しつつ地面に落着する。 聖「人を妄想に使うなと言っている」 遊佐「多分聞こえてないぞ」 聖「全く、情けないやつだな」 遊佐「綺麗にあごに入ったなぁ。今の」 ましろ「……そうだ」 何か納得したような表情でましろちゃんが声をあげた。 いやな予感がする。 ましろ「中島君! 良く分かったよ!」 聖「ま、ましろ?」 遊佐「ま、まさか……」 ましろ「さあ! 聖ちゃん! 服を見に行くよ!」 聖「ま、待つんだましろ。あんなバカの言葉を信じるんじゃない!」 遊佐「ましろちゃん。中島なんかに感化されたらダメだよ! バカがうつるよ!」 説得を試みる俺と聖。 ましろちゃんがクワッとこっちに振り向いた。 ましろ「遊佐君!」 遊佐「は、はい」 ましろ「あの聖ちゃんが照れる光景を見たくない?」 …………。 遊佐「見たい!」 聖「アホかおのれはぁぁぁ!」 遊佐「ぷぎゅるっ!」 ハイキックを側頭部に見舞われきりもみ回転する俺。 くそぅ。パンチラくらいよこせよ。 遊佐「ま、まて、聖」 聖「しぶといな」 遊佐「何事も経験だと思うんだ」 ましろ「そうだよ。経験だよ」 聖「ましろ、私はそんな経験はいらない。あと、遊佐は黙れ」 遊佐「それに……」 1.たまには女の子らしいのも 2.かわいい聖が見てみたい ――――――1選択時(聖好感度-1 遊佐「たまには女の子らしいのもいいんじゃないか?」 聖「私が女らしくないみたいな言い方をするな!」 遊佐「モルスァ!」 ――――――2選択時(聖好感度+1 遊佐「かわいい聖が見てみたいし」 聖「キモイことを言うな!」 遊佐「ぴぎゃっ!」 ――――――選択分岐終了 吹っ飛ばされ地面を転がる無力な俺の目に、ましろちゃんのやる気に満ちた顔が映った。 遊佐「聖よ……」 フラフラだが何とか立ち上がる。 聖「くっ。今トドメを……」 遊佐「お前はましろちゃんの行くところなら、どこへでも行くんじゃなかったのか?」 聖「ぐっ」 拳を振り上げたまま固まる聖。 ましろ「ふふふふふ。聖ちゃん。そう言ってたよね?」 聖「ぐぬぁっ」 遊佐「観念するんだな。ふふふふふ」 ましろ「んふふふふ」 あやしい笑いを浮かべる俺達に、聖がたじろぐ。 聖「うう……。分かった」 勝った! 中島が生きていれば、踊りだしたであろう。 あ、死んでなかったっけ。 遊佐「じゃあ、行こうか」 聖「だが、お前はここで死ね!」 遊佐「ごふぅっ」 ぼ、ぼでぃぶろーだと……。 ましろ「遊佐君。あなたの死は無駄にはしないよ」 聖「ま、ましろ。ちょっとだけ待っ……」 がしっと腕を掴み、にっこりと微笑むましろちゃん。 ましろ「時間も遅いし急ぐよ。聖ちゃん」 聖「ああああああああ……」 聖がずりずりと引きずられていく。 遊佐「ましろちゃん。とりあえず、写真をたの……」 聖「貴様ぁぁぁぁ!」 聖が投げた空き缶が俺の額に直撃した。
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砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐◆/VN9B5JKtM 3. 神速の雷は敵を撃ち貫き Number_Three_"Railgun". パニッシャーから吐き出された弾丸が黒い壁に阻まれる。 その光景を見て、ロベルタは二つの疑問を抱く。 (この壁……あの園崎詩音という女が使用していた銀色の膜に似ていますね) ラッドが現れた時もこの壁が炎を防いで、電撃使いも人形も火傷一つ負っていなかった。 以前ロベルタが殺害した少女も似たような能力を使用していた。ならばこれも同類の能力によるものなのだろうか、それが一つ目。 そしてもう一つの疑問。 (超電磁砲とやらは使わないのでしょうか? その威力次第では撤退も視野に入れていたのですが) ナインの情報にあった超電磁砲。民家を崩すほどの威力を誇るオレンジ色の閃光。 その話の通りなら一撃でも食らえばその時点で勝負が決まりかねないのだが、一向に撃つ気配がない。 (何か使用条件でもあるのか、それとも人を殺したくないとでも思っているのでしょうか……どちらにせよ、いくら強力な武器でも使えなければ唯のガラクタと同じです) 黒い壁に弾丸を撃ち込むロベルタの視界一杯に薔薇の花びらが舞い広がる。 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪。ガルシア坊ちゃまにもお見せしたい光景ですね、と場違いな思考を巡らせながらパニッシャーをかざす。 見た目こそただの花びらだが、その正体は触れたもの全てを切り裂く鋭利な刃物。それが逃げ場を封じるように、一斉にロベルタに襲いかかる。 迫り来る薔薇の大群を巨大な十字架を盾に防ぐ。 視界の端でリヴィオが黒い壁に銃弾を撃ち込み、その直後、撒き散らされた薔薇の花弁に襲われる。 敵の意識がリヴィオに向いている間にロベルタは壁の後ろに回り込む。円を描くように黒い壁を迂回し、少女と人形を捕捉する。 敵の姿を視界に収めたロベルタは足を止めてパニッシャーを構え、髑髏型の引き金を引く。狙うは電撃使いの少女。 十字の先端から無数の弾丸が発射され――少女を守るように割り込んできた黒い壁に飲み込まれるように消えていく。 立ち止まったロベルタに向かって壁の一部が鞭のように伸び、その足元を薙ぎ払う。 ロベルタはこれをバックステップで回避。目標を見失った黒い鞭はそのまま横のビルにぶつかり、ガリガリと耳障りな音を立てながらコンクリートの壁を削り取る。 ちらりと目をやると、黒い鞭がぶつかった辺りには巨大なナイフで切り付けたような傷痕が深々と刻まれていた。 思い通りにいかない現状にロベルタは歯噛みする。 薬を流し込みたい衝動を抑え込み、それが更に苛立ちを加速させる。 ブツリと肉を噛み千切る感触と共に口の中に鉄の味が広がり、食いしばった歯がギシリと音を立てる。 もちろんロベルタも何もかもが思う通りに進むはずが無い事は分かっている。 かつてフローレンシアの猟犬と恐れられ、何人もの人間を殺してきた彼女は予定外の出来事など幾らでも経験している。 だが、今回はあまりにも想定外の事態が重なり過ぎている。 最初の奇襲で確実に殺したはずの二人が無傷で生きていた事も、ラッド・ルッソの突然の乱入も、ナインの暴走も、敵の予想以上の戦闘力も。 いや、それ以前に自分がこの場に呼び出されたことも。 だがまだ状況は二対二、総合的な戦闘力では確実に自分達の方が上。ちょっとした切っ掛けで均衡は崩れ、天秤は自分達の方に傾く。そのはずだ。 なのに攻め切れない。 視線を横にやれば、自分の同盟者も同じように攻めあぐねているのが見えた。 理由は多々ある。 散弾のようにばら撒かれる花弁、機関銃の連射すら防ぎきる黒い壁、そこから鞭のように伸ばされる黒い剣。 だが一番の要因は味方のはずのこの男、リヴィオ・ザ・ダブルファング。 この男との同盟が成立している理由はただ一つ。自分の手にこの男の求める武器、パニッシャーがあるからだ。 逆に言えばこの男にとって、パニッシャーさえ手に入れれば無理に同盟を続けるメリットは無い。即座に単独行動に戻り、他の参加者を殺して回ったとしてもおかしくない。 そしてミュウツーにナインを追うように指示を出したのはリヴィオだ。つまりこの二対二の状況はリヴィオが作り出した事になる。 では何故ミュウツーにナインの後を追わせたのか? ナインが返り討ちにされないか心配したため――あり得ない。自分達は互いに利用し合う関係だ。ナインがやられたとしても切り捨てて三人で同盟を組み直す、それだけだ。 二対一で確実にラッドを仕留めるため――あり得なくはないが、それなら目の前の敵を三人で片付けてから追えばいい。ナインがやられていたとしても三対一だ。 残る可能性は――ロベルタと二人きりになればパニッシャーを奪うチャンスもあるだろうと考えたから。 だとすれば。たとえ目の前の敵に勝利したとしても、その過程で自分が行動不能なほどのダメージを受ければ、この男は間違いなく自分を殺しにかかる。最悪戦闘中に撃たれる可能性もあるため、一瞬たりとも警戒を解く訳にはいかない。 つまり実質的には二対二の戦いなどではなく、二対一対一の三つ巴だ。 ただ勝つだけでは足りない。できるだけ被害を抑えて、リヴィオより優位な状況で勝ちを収めなければならない。 リヴィオの異常な再生力を考えると、時間が経てば経つほど自分の優位性は失われていく。実際、数時間前には胸に大きな傷があったはずだが、今では傷跡すら残さず完治している。 本来ならば一刻も早く敵を殲滅するのが好ましい。多少のダメージは覚悟の上で、黒い壁の左右から同時に突撃したいところなのだが。 ここで敵が電撃使いだという事実がロベルタに二の足を踏ませる。 敵の武器が銃や刃物の類なら急所さえ外せば一撃で戦闘不能になる事はない。 だが雷撃が相手ではそうはいかない。一撃でもまともに受ければ体が麻痺して満足に動けなくなるだろう。 そしてリヴィオが拳銃を武器としているのに対して自分の武器は機関銃。敵がどちらを優先して迎撃するか……考えるまでもない。 雷撃を浴びて倒れ伏す自分に止めを刺すリヴィオ。その想像が頭をよぎり、どうしても思い切った行動に踏み切れない。 ギリギリのところで保っていた均衡が崩れ去る、その時が訪れるのは思ったよりもずっと早かった。 パニッシャーがカチンと音を鳴らし、その先端から吐き出されていた鉛弾の嵐が止む。 この半日、主武装として酷使し続けてきたパニッシャーがついに弾切れを起こした。 予備の弾薬はデイパックの中に入っているが、装填するまでは大きな隙が出来る。当然、相手が大人しく待っててくれるはずも無いだろう。 苛立ちを込めて十字架を地に突き立てる。 パニッシャーの重量とロベルタの膂力により、十字の先端が地に突き刺さる。 予備弾薬を取り出そうとデイパックに手を入れたロベルタの前で、ズズズ、と音を立てながら黒い壁が横にずれる。 その後ろから現れたのは、両手に人形を抱え、その手を前に突き出す電撃使いの少女。 ロベルタに向けて真っ直ぐに伸ばされたその手から。 「行くわよ、真紅っ!」 砲弾のように勢い良く人形が撃ち出され、一瞬にしてロベルタとの距離をゼロにした。 宙を飛ぶ人形の背からパラパラと黒い粉末が零れ落ち、虚空に軌跡を描く。 その隻腕が力強く握り締めているのは、彼女の小柄な体躯には釣り合わない大きな鋏。 目の前に迫った人形が右手を大きく振りかぶり、叩きつけるようにして鋏を振り下ろす。 デイパックから手を抜く暇もない。ロベルタは咄嗟に地に突き立てたパニッシャーを盾にして、人形の一撃を受け止める。 速度を乗せた一撃は小さな人形が繰り出したとは思えないほどに重く、受け止めた十字架が僅かに押し込まれて傾いた。 十字架で鋏と競り合いながらロベルタは考える。 想定外の出来事に対応が一瞬遅れたが、相手が接近戦を挑んでくるのなら好都合だ。 あの電撃使いの少女は自分やロアナプラの住人達とは違い、どう見ても平和な世界の住人だ。 味方を巻き込むこの状況では、あの少女は電撃を使わない、いや、使えない。ロベルタはそう判断した。 その考えは概ね正しい。 例えば今ロベルタの前に居るのが衛宮切嗣ならば、ストレイト・クーガーならば、あるいは橘あすかならば。美琴は電撃を放つ事など出来なかっただろう。 だからロベルタにとってただ一つ誤算だったのは―― ――真紅が電気を通さない人形だった事だ。 参加者についての情報を交換した際、ナインは真紅が人形だという事を話している。もちろん電撃使いの御坂美琴が真紅に説得され、自分達の敵となった事もだ。 ナインはその一部始終を目撃していたため、真紅には電撃が効かない事も知っていた。 だが彼女達四人の中に電撃を武器とする者はなく、美琴が味方である真紅を攻撃するはずも無いだろうと考えたため、その事は話さずに二人の能力について説明するだけにした。 つまり、ロベルタは『人形である真紅に電撃は通じない』という事実を知らなかった。 それが明暗を分けることになる。 左手でパニッシャーを支えながら、右手を黒鍵に伸ばそうとしたロベルタの耳に、パチリ、と火花の音が届く。 信じられない、という思いで顔を上げたロベルタが見たものは、肩まで伸びた茶色の髪からバチバチと火花を散らし不敵に笑う電撃使い。 まさか、という考えを振り払い少女の迎撃に移るが、人形ごと自分を攻撃してくるなどあり得ないと思っていたため、ロベルタの反応が僅かに遅れる。 素早くコルト・ローマンを抜き放ち、美琴の額に狙いをつける。真紅から美琴に、一瞬で狙いを切り替えたのは流石と言うしかないだろう。 だが銃弾の数百倍の速度で迸る雷撃の前にはその一瞬ですら致命的。 視線が、交差する。 ロベルタが引き金を引こうと指に力を込めたその刹那。 音を置き去りにして、雷が駆け抜ける。 角のように逆立つ前髪から放たれた雷撃の槍が、巨大な十字架に吸い込まれ――ロベルタの体中を数億ボルトの電流が駆け巡った。 全身の筋肉が一瞬で麻痺し、エプロンドレスの所々が焼け焦げ、三つ編みの先を縛っていたゴム紐が熱で焼き切れる。 視界はチカチカと明滅し、手からは拳銃が零れ落ちる。膝の力が抜けてガクリと地に崩れる。 墓標のように突き立つ十字の傍らで、ロベルタは己の意識を手放した。 ◇ ◇ ◇ 真紅は目の前に倒れ伏すメイド服の女を見下ろす。 口元に手をかざし、呼吸がある事を確認する。 「大丈夫、息はあるようだわ。そんな事より美琴、服が砂鉄まみれで気持ち悪いのだわ」 美琴達は最初から敵の機関銃が弾切れを起こした瞬間に勝負をかけるつもりでいた。 しかしここで、普通に電撃を放ってもロベルタがパニッシャーを避雷針代わりにして後ろに逃げるのではないか、という問題が発生した。 そこで二人の立てた作戦は、真紅が敵の足を止め美琴が電撃を放つ、というものだ。 だが真紅が普通に敵との距離を詰めても、その間に予備の武装で迎撃されてしまうだろう。 そこで美琴は真紅の背中を砂鉄でコーティングし、超電磁砲の要領で撃ち出した。 もちろん全力を出せば真紅の体が空気摩擦に耐え切れないので手加減はしたが、それでも相当なスピードだ。 ロベルタはパニッシャーで迎撃せざるを得ず、その表面を流れた電流により行動不能に陥った、という訳だ。 「美琴! その傷は……!」 「あー、うん。メッチャクチャ痛いわ」 当然、二人がロベルタに意識を向けている間リヴィオが何もしないはずがない。 黒い壁の操作がおざなりになった隙を突いて、美琴に目掛けてマガジン内の残弾を全て撃ち放った。 美琴も即座に砂鉄の壁で防御したが、その内の一発が左肩に命中し、肉を抉っていた。 傷口から血が溢れ、焼けるような痛みを訴えてくる。 「でも、この程度で学園都市の第三位、超電磁砲の御坂美琴を止められると思ったら大間違いよ」 2. 猟犬の牙は獲物を食らい The_Double_Fang. リヴィオはソードカトラスのマガジンを入れ替えながら状況を分析する。 自分はさしたるダメージを受けていないが、一応の同盟者であるロベルタは敵の電撃で行動不能。 対して自分たちが相手に与えたダメージは電撃使いの肩の傷のみ。 ラッドを追って病院内に消えたナインとミュウツーが戻って来る気配は無い。向こうは向こうで苦戦しているのだろうか。 最初は四対二だったはずが、いつの間にか一対二になっている。 単純に考えて敵との戦力差は二倍。 生存を優先するならば、何とか隙を作って逃げるべき。 (だが、これはチャンスでもある) 元々リヴィオの目的はパニッシャーを入手しラズロに渡す、それだけだ。 ナイン達と同盟を結んだのも、パニッシャーを手に入れるためにはその方が好都合だったからにすぎない。 そして現在、ナインとミュウツーは別行動、ロベルタは電撃で動けない。パニッシャーを手に入れる絶好のチャンスだ。 逃亡か、戦闘か。 リスクとリターンとを天秤にかけ、リヴィオの選んだ選択は―― (ここで逃げる訳にはいかない。電撃使いと人形を始末し、動けないロベルタに止めを刺してパニッシャーを入手する) ――戦闘の続行。 勝算はある。 敵の電撃使いは攻防共に優れた厄介な能力を持つが、それ以外はそこらの一般人と変わりない。 自分のように人並み外れた再生力を持つ訳でも、超人的な身体能力を誇る訳でもない。 現に先ほどの弾丸で大ダメージを受けている。隙を作って急所に弾丸を一発、それだけで殺せる。 もう一人の敵、人形は電撃使いのサポート役としては十分だが、単体ならば大した障害ではない。 薔薇の花弁は切れ味鋭いが、自分の再生力の前では力不足だ。 小柄な体躯の割に力はあるようだが、それもミカエルの眼で戦闘訓練と生体改造手術を受けた自分には遠く及ばないだろう。 一対一なら確実に自分が勝つ。 加えて敵は明らかに疲弊している。 先ほど電撃使いに銃弾を撃ち込んだ時も、最初に比べて黒い壁の動きが鈍っていた。 考えてみればそれも当然だ。最初の奇襲から今に至るまで、敵は自分達との戦闘中ずっと能力を行使しているのだ。あれほどの力を使い続けて疲れが溜まらないはずがない。 とは言うものの、やはり自分の不利は変わらない。 銃弾を阻む黒い壁、鞭のように伸ばされる黒い剣、散弾のようにばら撒かれる花弁、そして未だ満足に動かせない左手。 一丁の拳銃で勝てる相手ではない。 ロベルタの横に突き刺さっているパニッシャー、あれを使えれば話は変わるのかも知れないが、生憎パニッシャーは弾切れだ。 この戦況を引っくり返す一手が必要だ。 その糸口はあの真紅とかいう人形を見て閃いた。 マスター・Cの教え通り、仲間の死で動揺を誘う。 だが心のどこかで躊躇している自分が居た。 (ラズロならそんな事で迷ったりしない。お前の言う通り、やっぱり俺は甘いな……) この期に及んで甘さの残る自分を自嘲する。 その程度で揺らぐのか、と。お前が固めた覚悟はそんなものなのか、と。 そうだ、自分はラズロが戻って来るまで生き抜くと決めたはずだ。 「そう言えば、あの蒼星石とかいう人形、あれもお前の同類なのか?」 「…………おまえ、蒼星石を知っているの?」 「ああ」 感情を押し殺したような冷え切った声。 狙い通り。 「俺が殺したからな」 「真紅ッ!」 電撃使いの叫び声を無視して人形が飛び出して来た。慌てずに狙いを定め、引き金を引く。 手に僅かな反動を残して弾丸が発射され、人形の額を砕く――直前に黒い壁が割って入り、銃弾を防いだ。 それも予想の範囲内、あの女が人形をかばう事ぐらい最初から織り込み済みだ。 本当の狙いは、盾を失った電撃使い。 流れるような動作で銃口をずらし、頭、胸、腹、足を狙った四連射。 電撃使いは壁の後ろに転がり込んでこれを回避し、避け切れなかった銃弾がその右足を貫いた。 「美琴!」 「痛ぅっ……! 真紅、許せないのも当然だけど、少し頭を冷やしなさい」 「ええ、もう大丈夫。ごめんなさい……」 今ので仕留められなかったのは残念だが、確実にダメージは与えられた。 天秤は徐々に傾きつつある。 「ところで私もアンタに一つ聞きたい事があるんだけど」 黒い壁の向こう側で、電撃使いの女が口を開いた。 時間が経てば経つほど自分の傷は回復し、相手は血を流して体力を失う。 相手の意図は分からないが、時間稼ぎの意も込めて続きを待つ。 「アンタがクーガーさんを殺したの?」 ストレイト・クーガー。殺し合い開始直後に病院付近で、そして第二回放送前に地下で、二回に渡ってラズロと激闘を繰り広げ、死闘の果てにラズロと相打った男。 何故この女がラズロとクーガーが戦った事を知っているのか。 疑問に思い、あの時地下に居た連中の顔を思い浮かべようとしたところで、そう言えばあの中の一人がこの女だったな、と思い出す。 あの時とは雰囲気が全く違っているため、今まで別人だと思っていた。 「だったらどうする? 奴の死に様でも聞かせて欲しいのか?」 挑発するように答えを返す。 これで頭に血が昇ってくれれば儲け物だ。 「別に、どうもしないわよ。アンタを倒す理由がまた一つ増えただけ、私がやる事は変わらないもの」 その通りだ。 相手の目的が敵討ちだろうが何だろうが、自分のやるべき事は変わらない。 目の前の障害を排除し、ウルフウッドさんとの再戦に備えてラズロのためにパニッシャーを手に入れる。それだけだ。 「ああ、ついでにもう一つ。アンタの左腕、確か地下で見た時には肩から先が無かったはずだけど、その再生力はアンタの能力?」 「だったら何だ?」 「そう。――――良かった」 その不可解なセリフを訝しむ間もなく。 黒い壁に大穴を穿って飛び出して来た弾丸が、オレンジ色の尾を引いてリヴィオの足元に突き刺さった。 すぐ横の地面が爆ぜ、その衝撃で吹き飛ばされる。一瞬遅れて鳴り響く轟音を聞きながら地を転がる。 起き上がり視線を向けたその先で、まるで砂が流れ込むように、黒い壁に空いた穴が塞がってゆく。 穴が完全に埋め立てられる、その刹那。怒りの篭った女の視線が突き刺さる。 「アンタには相当ムカついてるから、ちょっとやり過ぎちゃうかも知れないけど……。死にはしないって事よね?」 御坂美琴の持つ最強の攻撃手段、超電磁砲。今までの攻撃とは桁違いの威力。 リヴィオの立つ位置があと一歩ずれていたら、間違いなく今の一撃で足を吹き飛ばされていた。 今まであれを使わなかったのは、自分達を殺したくなかったからだろうか。確かにあれは当たり所によっては人の一人や二人、簡単に殺しかねない。 だがロベルタが倒れ、欠けた腕すら復元するほどの再生力を持つリヴィオが残ったため、急所さえ外せば問題ないと判断したようだ。 リヴィオも、まさか自分の再生力が仇になるなどとは夢にも思わなかった。 (あれがナインの言っていた超電磁砲……再生力が制限されている今、あんなものを連発されれば一たまりも無い。やはり、使うしかないか) 残り4発の切り札、エンジェルアーム弾頭。 できれば温存しておきたかったが、ああも凄まじい破壊力を見せ付けられてはそうも言っていられない。 敵の位置は超電磁砲で開いた大穴から確認済みだ。 一発目で黒い壁に穴を空け、二発目で電撃使いを葬り去る。 通常弾頭入りの銃からエンジェルアーム弾頭入りの銃に持ち替える。 その直後、リヴィオに向かって薔薇の花びらが撒き散らされる。 リヴィオはそれを回避――しない。 リヴィオは戦闘中、一つの疑問を抱いていた。 敵は黒い壁に隠れ、こちらからは姿が見えない。だがそれと同時に、敵からこちらの姿を見ることも出来ないはずだ。 ならば敵はどうやって自分達の位置を割り出しているのか? (壁が弾丸を受け止める角度? いや……音、だろうな) 恐らくは銃声や足音などの音から自分達の位置に当たりを付けている、リヴィオはそう予想した。 だが聴覚だけでは正確な位置までは割り出せないため、花弁を撒き散らしたり、黒い剣で薙ぎ払うようにして広範囲を攻撃してきたのだろう。 先ほどの超電磁砲の一撃がリヴィオを捕らえられなかったのも、正確な位置が分からなかったからだと考えれば納得がいく。 身を切り裂く花弁の嵐の中、リヴィオは己の再生力を頼りに、足音を殺してゆっくりと移動する。 数歩、歩みを進めたところで、リヴィオを飲み込もうと黒い壁が迫ってきた。 津波のように、あるいは雪崩のように。もっとも砂の惑星で生まれ育ったリヴィオにはその例えは思いつかなかったが。 ともかくリヴィオはここで勝負を決めようと、電撃使いの居るであろう場所に向けて銃を構えた。 黒い壁が目前にまで迫り、引き金を引こうとして――二度目の超電磁砲が放たれ、数秒前まで自分が居た地面がごっそり抉り取られた。 先の一撃より距離が離れていたため、リヴィオは衝撃によろめくも無様に地に転がるようなことは無かった。 すぐさま体勢を整え、エンジェルアーム弾を撃ち込もうとしたところで。ヴゥゥン、と唸りを上げて、リヴィオの腕に黒い剣が振り下ろされた。 そこでリヴィオも気付く。超電磁砲はリヴィオを狙ったものではなく、あくまで隙を作るための一撃。本命はこの黒い剣。 拳銃を握り締めたままで、切り落とされた手首が地に落ちる。 激痛を無視し、動かない左手を無理矢理に動かして、拳銃を拾うため手を伸ばす。 グリップに手が触れた瞬間、黒い壁の後ろから真っ赤な人形が視界に飛び込んできて。 ズブリ、と。人形の振り下ろした鋏で手首が地に縫い止められる。 「ナイス、真紅!」 サラサラと崩れ落ちる壁の向こうで、バチバチと火花が散る。 鋏が引き抜かれるとほぼ同時。 電撃が、奔った。 ◇ ◇ ◇ ロベルタが目を覚ましたのは彼女が気絶してから二十分ほど経過した頃だった。 最初に視界に入ったものは自分の傍らに突き立つパニッシャー、地に倒れ伏すリヴィオとその横に転がる拳銃だった。どうやら自分に続いてリヴィオも敗北したらしい。 既に敵の姿はなく、どういうつもりか自分達の荷物も手付かずのまま放置されている。 殺し合いを否定する立場なら止めを刺さないというのはまだ分かるが、自分達が拘束も武装解除すらされずに放置されているというのは腑に落ちない。 よほど自分達の力に自信があるのか、あるいはその僅かな手間すら惜しんだのか。 いずれにせよ好都合だ。自分が倒れる直前まで持っていたはずの拳銃を手探りで探し出し、しっかりと握り締める。 (私はまだ死んでいない。奴らに突き立てるための牙も残っている。ならば、私のやるべき事は一つしかありません) まずは一刻も早くこの場から離脱しなければならない。 病院内の戦闘がどのような結果になるかは分からないが、その勝者が誰であろうが自分を発見すれば殺すだろう。 ラッド・ルッソならば嬉々として。ナインやミュウツーならば足手纏いを切り捨て武装を奪うために。 そう、今のロベルタがリヴィオを殺そうとしているように。 全身が痺れて満足に動かせない今、彼等のような強敵に襲われれば命は無い。 麻痺した筋肉を強引に動かし、プルプルと震える両腕を支えにして強引に上体を起こす。 ところで、美琴の放った電流には、常人ならば数時間は身動きが取れなくなるほどの威力が込められていた。 そしてロベルタには電撃に対する耐性も無ければ、リヴィオのような異常な再生力も無い。本来なら今も指一本動かせないはずだ。 では何故、彼女は動けるのか。 その理由は単純、地に突き立ったパニッシャーだ。 確かに美琴の放った雷撃の槍はパニッシャーに直撃し、その表面を伝ってロベルタの体に流れ込んだ。 だが美琴と目が合った瞬間、直感的に危険を感じたロベルタは反射的にパニッシャーから手を放していた。 僅かに行動が遅れたため完全に回避する事は出来なかったが、地に突き立ったパニッシャーが避雷針の役目を果たし、膨大な電流を大地に流した。 電撃の大半が地面に流れた結果、本来ならば数時間は身動きできないはずのロベルタは僅か二十分程度で起き上がる事ができた。 (御当主様、若様……。必ずや……奴らの喉元に喰らいついてみせます) 一言で言えば、ロベルタの鍛えられた直感と超人的な反射神経がダメージを最小限に抑えた、そういう事だ。 「サンタ・マリアの、名に誓い……すべての不義に――鉄槌を!」 ――だからこれは、リヴィオの再生力がそれを上回った、ただそれだけの話。 銃弾が空気の壁を突き破る音と共に、ロベルタの左胸が消失した。 ◇ ◇ ◇ リヴィオが意識を取り戻したのはロベルタが目覚める十分ほど前だ。 そして持ち前の再生力で全身を復元している最中、ロベルタが起き上がろうとしているのに気付いた。 自身はまだ起き上がることはできなかったが、辛うじて動かせる左手で目の前に転がるソードカトラスを掴み取る。 体中が痺れて腕を持ち上げても狙いが定まらないため、グリップを地面につけ、手首の動きだけで銃を傾け、銃口をロベルタに向ける。 幸いマガジンにはエンジェルアーム弾頭が装填されているため、多少狙いが外れても当たりさえすれば十分に致命傷を与えられる。 ブレる手を必死で押さえ込み、狙いを定めて引き金を引く。 銃口から放たれたエンジェルアーム弾頭が、両手をついて起き上がろうとしていたロベルタの左肩から左胸にかけて、ごっそりと削り取った。 左腕の肘から先だけがボトリと転がる。 支えを失った体がぐらりと傾き、ビチャリと水音を立てて地に落ちる。 傷口から溢れ出た鮮血が地面を赤黒く染めていき、辺りに鉄錆にも似た血の臭いが蔓延する。 「やった、か……」 ズルズルと地面を這いずってロベルタの横まで移動し、確かに死んでいる事を確認すると、地面に散らばった荷物を回収する。 死ぬ瞬間まで握り締めていた拳銃、柄のやたら短いナイフ、デイパックに入った大量の荷物。 そして最大の収獲、パニッシャー。 上からロベルタのデイパックを被せるようにして回収し、自分のデイパックに仕舞い込む。 「これで同盟は解散だな」 感情にロベルタの死体を見下ろす。 パニッシャーを手に入れた今、奴らと行動を共にする理由など無い。 奴らは奴らで勝手に動いて参加者を減らしてくれるだろう。ならば次に会うまでは放っておけば良い。 「それにしても、ようやく一人か……。ダメだな、この程度で喜んでるようじゃラズロに笑われちまう」 リヴィオが表に出てから何度も戦闘を繰り返してきたが、その度にラズロとの差を思い知らされた。 劇場では手痛い敗北を喫し、駅前では様子を見ている間にチャンスを逸し、そして今もまた敵に破れ惨めな姿で地に倒れ伏していた。 ようやくリヴィオ・ザ・ダブルファングとして初めての戦果を挙げる事ができたが、それもたまたま自分の方が先に相手の体に鉛弾を撃ち込むことができたからに過ぎない。 もしこれが自分ではなくラズロならば、間違いなくこんな無様は晒さない。 やはり自分ではラズロには遠く及ばない。 だが、そんな自分でもラズロのためにパニッシャーを手に入れる事ぐらいはできた。 (ラズロ、準備は整えた。あとはお前が戻って来れば……) 孤児院での、劇場での闘いの記憶が蘇る。 圧倒的な身体能力差を覆しての敗北。確かに自分では、ダブルファングではウルフウッドさんには勝てない。それは認めよう。 だがラズロならば、トリップオブデスならば。パニッシャーを手にした今、たとえ相手が何者だろうと負ける事など有り得ない、そう確信できる。 (だから、いつでも戻って来い……ラズロ!) 間もなく訪れる決着の気配を感じ、リヴィオは闇の中へと歩を進める。 唯一無二、一心同体のパートナーの帰還を待ち望みながら。 【ロベルタ@BLACK LAGOON 死亡】 【残り23人】 【E-5 北西/一日目 夜】 【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】 【状態】:全身治癒中、右手再生中、背中のロボットアーム故障、全身に痺れ 【装備】:M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×3@トライガン・マキシマム 【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、 ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填) 天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム、三代目鬼徹@ワンピース パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数0% ロケットランチャーの弾丸数2/2)、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム 投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35 グロック26(弾、0/10発)@現実世界、謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%) パ二ッシャーの予備弾丸 2回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero 、首輪(詩音) 【思考・状況】 0:ラズロが戻るまで必ず生き抜く。 1:痺れが取れるまでどこかで休息を取る。できれば右手も治るまで休みたい。 2:参加者の排除。ウルフウッドとヴァッシュに出会ったら決着を付ける? 3:ウルフウッドを強く意識。 【備考】 ※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。 ※ラズロとの会話が出来ません。いつ戻ってくるか、もしくはこのまま消えたままかは不明です。 時系列順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 投下順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 Back Next 砂鉄の楼閣(前編) 御坂美琴 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) 真紅 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) ミュウツー 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) ラッド・ルッソ 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) ブレンヒルト・シルト 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) ロベルタ 死亡 砂鉄の楼閣(前編) リヴィオ・ザ・ダブルファング 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 砂鉄の楼閣(前編) ゼロ 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐